Japanische Klassiker mit Furigana
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いえ
家
島崎 藤村
Lesen Sie 家 (いえ) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.748 Zeichen · 254 Bildschirme
と言って、三吉は深い溜息を吐いて、「考えてみると、僕のような人間がよく今まで生きて来たようなものだ」
正太は叔父の顔を眺めた。
三吉は言葉を継いで、「彼処へ着いた晩から、僕は最早別の人だった。種々な物が活きて見えて来た。書く気も起った……」
「あの時叔父さんの書いたものは、吾家に蔵ってあります」
「しかし正太さん、お互にこれからですネ。僕なぞも未だ若いんですから、これから一つ歩き出してみようと思いますよ……」
こんな話をしているところへ直樹が入って来た。直樹は中学に入ったばかりの青年で、折取った野の花を提げて、草臥れたような顔付をしながら屋外から帰って来た。
「直樹さん、何処へ?」と三吉が聞いてみた。
「ええ――ずっと河の岸を廻って来ました」と直樹は答える。
その時、正太は床の間にある花瓶を持出して、直樹が持って来た百合だの撫子だのの花で机の上を飾った。
「兄さん、山脇の姉さんがチト御遊びに被入っしゃいッて――真実に兄さんは遠慮深い人だって」
こう直樹が自分の親戚からの言伝を三吉に告げた。三吉はあまり町の人を訪問する気が無かった。
活気のある鈴の音が谷底の方で起った。