Japanische Klassiker mit Furigana
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いえ
家
島崎 藤村
Lesen Sie 家 (いえ) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.748 Zeichen · 254 Bildschirme
三吉は黙って姉の言うことを聞いていた。お種は更に嘆息して、
「旦那もね、お前さんの知ってる通り、好い人物なんですよ。気分は温厚ですし、奉公人にまで優しくて……それにお前さん、この節は非常な勉強で、人望はますます集って来ましたサ。唯、親としてのシメシがつかない。真実に吾子の前では一言もないようなことばかり仕出来したんですからね。旦那も今ではすっかり後悔なすって、ああして何事も言わずに働いてる。旦那の心地は私によく解る。真実に、その方の失敗さえなかったら、旦那にせよ、正太にせよ……私は惜しいと思いますよ」
お種は、気の置けない弟の前ですら、夫の噂することを羞ずるという風であった。夫から受けた深い苦痛――その心を他人に訴えるということは、父の教訓が許さなかった。
「代々橋本家の病気だから仕方ない」
とお種は独語のように言って、それぎり、夫の噂はしなかった。
ゴットン、ゴットンという御輿の転される音は、遅くまで谷底の方で、地響のように聞えていた。
直樹は一月ほどしか逗留しなかった。植物の好きなこの中学生は、東京への土産にと言って、石斛、うるい、鷺草、その他深い山の中でなければ見られないような珍しい草だの、香のある花だのの見本を集めて、盆前に橋本の家を発って行った。