Japanische Klassiker mit Furigana
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いえ
家
島崎 藤村
Lesen Sie 家 (いえ) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.748 Zeichen · 254 Bildschirme
「福ちゃん」
とお雪は妹を呼んだ。返事が無かった。お福はよく上り端の壁の側や物置部屋の風通しの好いところを択んで、独りで読書するという風であったが、何処にも姿が見えなかった。
「福ちゃん」
と復たお雪は呼んで探してみた。
南向の部屋の外は垣根に近い濡縁で、そこから別に囲われた畠の方が見える。深い桑の葉の蔭に成って、妹の居る処は分らなかったが、返事だけは聞える。
お雪は入口の庭から裏の方へ廻って、生い茂った桑畠の間を通って、莢豌豆の花の垂れたところへ出た。高い枯枝に纏い着いた蔓からは、青々とした莢が最早沢山に下っていた。
「福ちゃん、福ちゃんッて、探してるのに――そんなところに居たの」こうお雪が声を掛けた。
お福は畠の間から姉の方を見て、「今ね――一寸裏へ出て見たら、あんまり好く生ってるもんだから。すこし取って行って進げようと思って」
「そう……好く生ったことね」と言ってお雪も摘取りながら、「福ちゃん、此頃姉さんと約束したもの……あれを書いておくれナ。母親さんの許へ手紙を出すんだから――」
「姉さん、そんなに急がなくたって可いわ」
「だって、どうせ出す序だもの」