Japanische Klassiker mit Furigana
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てらさかきちえもんのとうぼう
寺坂吉右衛門の逃亡
直木 三十五
Lesen Sie 寺坂吉右衛門の逃亡 (てらさかきちえもんのとうぼう) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.243 Zeichen · 19 Bildschirme
吉右衛門は、明るい心になって、微笑していた。
七
「まあ、吉右衛門――何うしたえ、上るがよい、さ」
と、玄関へ、出てきた、大石の妻が、嬉しそうにいった。
「未だ、お知らせは?」
「何の?」
「首尾よく、吉良を、お討取りになりまして御座ります、これが、その――」
「ええ? 吉良上野を――」
吉右衛門は、瓦版を、三通取出して
「所々、字がまちがっておりますが、太夫様、以下四十七人、一人残らず無事で――」
妻は、薄く涙をためて、蒼白めた顔になっていた。吉右衛門は
(俺の逃げたことがばれても、一番先に、こうして知らせておけば、罪亡ぼしになる)
と、思った。
「お前も、この中へ入っていなさるのう」
「いいえ、手前は、ほんのお供で――」
「詳しい話を聞きましょう、さ、上って――これ、すすぎを早う」
「いいえ、これから、華岳寺へ参りまして、また江戸へ」
「江戸へ?」
「何う処置がきまりますか、皆様の御先途を見届けたいと、存じまして」
「それにしても、一寸上って、そして、主税は、働きましたかえ」
「ええ」
吉右衛門は、頷いて
「何んしろ、皆様御無事で、こんな目出度いことは御座りませぬ。