Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
えいがじだい
寺田寅彦随筆集 第二巻
寺田 寅彦
Lesen Sie 寺田寅彦随筆集 第二巻 (えいがじだい) von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 207.099 Zeichen · 419 Bildschirme
ただ私がヴァイオリンを独習している事を話した時に、ケーベルさんは私のもっている楽器の値段を聞いた。それが九円のヴァイオリンである事を話したら、ケーベルさんは突然吹き出して大きな声でさもおもしろそうに笑った。私はそれがなぜそれほどにおかしい事であるかをその時には充分理解する事ができなかった。それにもかかわらず私は笑われても別に不愉快でなかった。かえっていかにも罪のない子供のような笑いにつり込まれて私もわけもなく笑ってしまったのであった。
次の室の棚の上にオルゴールのような楽器が置いてあった。それを鳴らして聞かしてくれたりした。
その時の話の結果として、ケーベルさんは私のためにある音楽家に紹介状を書いてくれた。それは結局断わられて無効になってしまった。そうして私はとうとう二十年後の今日まで、ほんとうの楽器の扱い方を知らずに過ごして来た。
しかし私がケーベルさんを尋ねた第一の動機は、今になってみると、ヴァイオリンの問題よりはやはりむしろケーベルさんに会う事であったらしく思われる。考えてみると恥ずかしい事である。その時に私は二十三歳であった。ケーベルさんもまだそう老人というほどでもなかった。