Japanische Klassiker mit Furigana
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ちいさきなにも
小さき花にも
豊島 与志雄
Lesen Sie 小さき花にも (ちいさきなにも) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.115 Zeichen · 21 Bildschirme
酒のねえ一日は、心細えんだ。毎日毎日、酒を飲んでばかりいやがる。だが、原稿は書くよ。おい、小杉君、小杉さん、原稿は書くぜ。書かなけりゃあ、心細えんだ。何か書かなけりゃあ、淋しくてやりきれねえ。だから、安心しろよ。きっと書く。安心して、酔っ払っちまえ。酔っ払って、泊っていけよ。今夜はざこ寝だ。ええと、小杉……きくちゃん。君は似てるね。誰にだい。わんわんさ。俺がわんわんだ。それは奇遇だ。」
祝杯を挙げると、飲み干したはずみに、先生は倒れかかった。側の者がそれを支えた。先生は坐りなおして、また祝杯を挙げた。
「あなた似てるわ。」
弘田啓子が音頭を取った。
私はそっと座をすべって、靴をはき、土間に立った。ふしぎなことに、誰も私を引き留めようとする者がなかった。酔って表の空気を吸いに出る、そんな風に思われたのかも知れない。それとも、もう私のことなど、面白くないので誰も眼にとめないのかも知れない。私はすっと外へ出た。
もう暮れていた。都心から遠い雑草のある道を、とぼとぼ歩いていると、眼に涙が出てきた。なんというでたらめな、そして悲しい人たちだろう。先生はじめみんなそうだ。