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Japanische Klassiker mit Furigana

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ちいさなやぎのきろく

小さな山羊の記録

坂口 安吾

Lesen Sie 小さな山羊の記録 (ちいさなやぎのきろく) von Sakaguchi Ango (坂口 安吾) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.402 Zeichen · 19 Bildschirme

Aozora Bunko

身体の位置を動かすたびに、岸辺をうつ波のように広い幻聴が一時にわき起こり、私の頭は分裂しそうになるのであった。その幻聴は、悪意のある幻聴ではなかった。隣室から誰かゞ起きて階下へ走り、同時に階下から誰かゞ起きて階上へ走り、それが階段で交錯し、井戸の水をくんでバケツへあける音や、掃除をする音や、同時に色々の音が起るだけであった。そして、その頃から、幻視も、やや明確に起りはじめた。それは、いつも、女房の顔であった。私の隣にねているのである。然し、よく見ると、そこには、誰も居なかった。

長畑さんが耳鼻科の医者をつれてきてくれて、翌日にも、耳鼻科へ入院するつもりでいたら、長畑さんのつれてきたのは精神科の千谷さんであった。私は耳鼻科へ入院したいのです、と、やゝ怒りを現して叫んだが、千谷さんはそれには答えず、私を診察した。

こうして私は精神科へ入院し、持続睡眠療法をうけ、一ヶ月間昏酔したが、目が覚めたとき、一夜ねたとしか思わなかった。科長の内村さんは、結局、東大の療法と同じことを、私が無意識に自宅に於て行っていたわけだろうと、笑った。

昏睡からさめて後、耳鼻科の医者がきて、ていねいに調べてくれたが、蓄膿らしい何物もなく、全然故障がなかった。