Japanische Klassiker mit Furigana
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ろうじゅうのめがね
小笠原壱岐守
佐々木 味津三
Lesen Sie 小笠原壱岐守 (ろうじゅうのめがね) von 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 57.249 Zeichen · 115 Bildschirme
「おれに斬れというのか」
「いいや、新兵衛も行く! おれも行く! 一緒にいって斬ってくれっ」
「ひとりでは山県狂介が斬れんのか」
「斬れんわけではないが、狂介ごとき、き、斬れんわけではないが……」
「斬れんわけでなければ、おぬしひとりでいって、斬ったらよかろう。それとも狂介はひとりで斬れるが、山県有朋の身のまわりにくっついている煙りが斬り難いというなら、やめることさ」
「では、貴公は、おまえは、むかしの仲間を見殺しにするつもりか!」
「つもりはないが、おぬしは腹が立っても、おれは腹が立たんとなれば、そういうことにもなるじゃろうの。――行くもよし、やめるもよし。おれはまずあしたまで、生きのびてみるつもりじゃ」
「……!」
ぽつりと声が切れたかと思うと、しばらくうしろで新兵衛の荒い息遣いがきこえていたが、やがてばたばたと駈け出した足音があがった。
四
間違いもなく平七は、そのあくる日まで無事に生きのびた。
また奥からか、庭先からか、同じように呼ぶだろうと思っていたのに、しかし有朋は、それっきり何の声もかけなかった。
いち日だけではなかった。ふつ日たち、三日となっても、有朋は顔さえみせなかった。