Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうせつ えんちょう
小説 圓朝
正岡 容
Lesen Sie 小説 圓朝 (しょうせつ えんちょう) von 正岡 容 (まさおかいるる) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 163.270 Zeichen · 325 Bildschirme
滅多にこんなこといったこともない師匠が、ある晩、しみじみこういって自分の猪口を小圓太へ差してくれた。寄席のお休みの晦日の晩で、真っ暗な庭のところどころには白藤の花が夜目にも微かに揺れていた。
「ト、とんでもない。もったいないお言葉でございます」
ありがたくそのお酒をいただきながら小圓太は、あわてて手を振った。
「いや、ほんとほんとうだよ。そのうち、お前を真打にしよう。じつはもう二、三軒、さる席へ口をかけているんだ」
いかにも可愛いもののようにジーッと悧巧そうな小圓太の顔をみつめて、
「二つ返事で席亭も承知をするにちがいないよ、お前の腕なら」
「…………」
真打に、いよいよこの私が真打に。嬉しさに小圓太は口も利けなかった。
思わず師匠へ返す盃がガタガタ慄えた。
が、十五日、ひと月と経って、小圓太真打昇進の話は一向に進んでこなかった。
圓生はひとりヤキモキした。
あんなに巧くなっているものを。
自らほうぼうの席亭へ出向いていって、菓子折など差し出し、懇々と頼んだが、
「ハイハイ分りました、恐れ入ります」
とか、
「ハイハイいずれそのうち時期を見まして」
とか、みんながみんな判で押したように煮え切らない返事をするばかりだった。