Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうせつ えんちょう
小説 圓朝
正岡 容
Lesen Sie 小説 圓朝 (しょうせつ えんちょう) von 正岡 容 (まさおかいるる) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 163.270 Zeichen · 325 Bildschirme
そこの大切な御註文で、石燈籠といっしょにお届けしなければならない石の狐の片耳を、なんと落っことしてしまったのだ。
「……」
親方は昨夜夜明かしでこいつを彫り上げ、大そう出来がよかったといって上機嫌で最前お歳暮にでていったものを。本能的に地べたへささったその耳を取り上げ、泥を払って元の狐の耳のところへくっつけてみたが、くっつこうはずもなかった。
すぐまたポロリと落ちて元の土の上へ。術もなく傷ついた青白い耳はころがってしまった。
「とんだ……とんだことに……」
恐らくその狐の耳のいろの何十倍も青白くなっていたろう、あるいは紙のように白く白くなり果ててしまっていたかもしれない顔を力なく上げると次郎吉は、未練らしく、もういっぺんまたその狐の片耳を手に取り上げた。そうして無意味に手の中であっちへやったり、こっちへやったりしていた。
どうしよう。
ああ、どうしよう。
でも、今更どう足掻いたとてもがいたとて、しょせんがどういい知恵がでるでもなかった。
おもえばおもうほど、考えれば考えるほど、ゆく手が真暗闇になってしまった。しかもあとからあとから目の前にひろがってくる不安の常闇はまるでとこしなへの日蝕皆既のよう絶えずいや増してゆくばかりだった、まるで烏賊の吹きいだすあの墨のように。