Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうせつ えんちょう
小説 圓朝
正岡 容
Lesen Sie 小説 圓朝 (しょうせつ えんちょう) von 正岡 容 (まさおかいるる) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 163.270 Zeichen · 325 Bildschirme
いよいよ何かはじまった――。
戸棚から真鍮の燭台を持ちださせ、それを下の座敷のまん中へ置いて圓朝は、たった一本だけのこっていた青蝋燭へ灯を点した。普通の蝋燭の灯のいろとちがって少し陰気で薄黄色いのが、いっそうこの場合の部屋のたたずまいを無気味にした。四方八方閉め切っているのにしきりにどこからか生暖かい風が忍び入ってきて、その灯を揺り動かした、まるでいまにも消してしまいそうに。無気味さが、ますます部屋一杯にひろがってきた。
その灯の傍に坐って圓朝は、ジッと目を閉じ、腕組んでいた。少し離れたところに、ペタッと腰を落として女中も遠くから不安そうに主人の顔を見上げていた。
「開けて……あの開けて……私」
ピューッとまた横なぐりの雨が表の戸へ吹きつけてきたとき、小刻みに駈けてきた足音が急に止まって、声がした。小糸だった。すぐ女中が立っていった。
びっしょり濡れしょぼけて入ってきた。母のおすみも元気だった。少し遅い出番の弟子たちはまだ家にいて無事だったけれど、早くでていったほうの弟子連中は途中でどうなったか。どこかしことなく江戸中残らずの木戸が、もう閉まってしまっているのだということだった。