Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうしょうしげもとのはは
少将滋幹の母
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 少将滋幹の母 (しょうしょうしげもとのはは) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 83.234 Zeichen · 160 Bildschirme
現に左大臣の装束に薫きしめてある香の匂が、此の御簾のうちへかぐわしく匂って来るのを見れば、彼女の衣の薫物の香も左大臣の席へ匂っているに違いない。事に依るとあの屏風の畳まれたのも、誰かゞ左大臣の意を酌んで、わざとあんな風に動かしたのであるかも知れない。それかあらぬか、左大臣は御簾のうちにある北の方の顔を、何とかして見届けようとする如く、探るような瞳を挙げてしきりにキョロ/\するのであった。
左大臣の席からはずっと離れた遥かな末座に、別にもう一人、矢張此の御簾のあたりへ密かな視線を注いでいる男があるのを、北の方は疾うから意識していたが、それは云う迄もなく平中であった。女房たちは勿論それに気が付いていたのであるが、今の場合北の方に憚かって、此の優男の噂をするのを差控えながら、心の中では左大臣と比較して、孰方がより美男子であるかを批判していたでもあろう。北の方は、嘗て幾夜となくうす暗い閨の燈火のはためく蔭に、夫の大納言の眼をかすめて此の男の抱擁に身をゆだねたおぼえはあるが、こう云う晴れの席上で、歴々の人々の間に伍している彼を見るのは始めてゞあった。が、さしもの平中もこう云う座敷では、堂々たる時平の貫禄に押されて、別人のように貧弱に見え、蘭燈なまめかしき帳の奥で逢う時のような魅力がない。