Japanische Klassiker mit Furigana
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さんじょうこ
山上湖
豊島 与志雄
Lesen Sie 山上湖 (さんじょうこ) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.912 Zeichen · 22 Bildschirme
掌も額も冷たい感じだ。ひたひたと、足先の岸べにかすかな水音がする。平田はそこいらを歩き廻っていた。近くに来て、ふいに私の名を呼んだ。
「美津子さん。」
私はじっとしていた。
「美津子さん。僕は人生がつまらなくなった。何もかもばかばかしく思われる。どうしていいか分らないんだ。ねえ、お願いだから、こうしろとか、ああしろとか、何とか言ってくれない。どんな些細なことだって、大きなことだっていい。君の言う通りにする。」
私は顔を挙げた。彼は月の光りを斜め後ろから受けて、影法師がつっ立ってるようにも見える。
私は言葉を出しかけてやめた。彼の名を、平田さんではなく、良彦さんと、ただ呼んでみたかったのだ。そして泣きたかった。けれど、なにか冷りとするものに心が鎖された。私は孤独なのだ。
彼はまったく、私の言う通りになるだろう。私が黙って歩きだせば、私のあとについて来るだろう。湖水の中にすっとはいってゆけば、深い底までもついて来るだろう。そう私は感じた。そしてそのことが、月光の中で、私を孤独にした。
私は立ち上って歩きだした。彼はすぐ後ろについて来た。
掛け網が幾つも並んで、木に渡して干してある。