Japanische Klassiker mit Furigana
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さんじょうこ
山上湖
豊島 与志雄
Lesen Sie 山上湖 (さんじょうこ) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.912 Zeichen · 22 Bildschirme
それを平田はしきりに物色している。
「月の光りでは、紅葉はだめね。」
「そう、色が消えてしまう。」
「赤いのから、黄色いのへかけて、いろいろあるわね。あれ、葉っぱの性質によるのかしら。」
「さあ。植物学者に聞いたら分るかも知れないが……。」
それきり、私は黙りこんでしまった。もっと気のきいた返事はないものかしら。植物学者……はことにひどい。以前の平田は、こんなとき、詩人らしい楽しい返事をしてくれたものだ。そして私は彼と、どんなつまらないことをどんなに長く話しても倦きなかったのだ。ここに来て、確かに彼はどうかしている。熊の彫り物のせいだろうか。
あの神社の前の土産物店に、いろいろな品に交って、熊と蟇の木彫があった。平田はそれを長い間眺めていた。そして旅館に帰ってから、増築中の仕事場からであろうか、木目の美しい木片を一つ拾ってきて、ナイフで熊を彫りはじめたのである。
神社のところまで行っただけで、私は遠くへ外出したくなかった。湖水には、毎日遊覧船が出ていたが、それにも乗りたくなかった。どうせ、何々の岩とか、何々の松とか、何々の浦とか、何々の島とか、そんなものにきまっている。