Japanische Klassiker mit Furigana
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やまぶきちょうのさつじん
山吹町の殺人
平林 初之輔
Lesen Sie 山吹町の殺人 (やまぶきちょうのさつじん) von 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.530 Zeichen · 37 Bildschirme
まるではじめての家を訪れる時のように、彼はしばらく我が家の前に佇(たたず)んで思案をこらしていた。家の中は森閑(しんかん)としていて別に変った様子もなかった。とうとう彼は思いきってくぐりを開けた。
玄関へ迎えに出た嘉子の態度にはひどく平常(ふだん)と変った点はなかった。ただいつもとちがっている点は、殆んど口かずをきかないこと位だった。しかし、それは今朝役所へ出かける時に傷つけられた感情の余勢と見る方が自然な位であった。
「まあどうしたんでしょう」大宅の脱いだズボンをたたんでいた嘉子は、突然吃驚(びっくり)して叫んだ。「おズボンに血がついててよ」
「えっ」と血相をかえて大宅は叫んだ。なる程ズボンの膝のところに、まだ生々しい血のりがついていた。あれだけ用心をして来たのに、家へ帰るが早いかこんな大手抜かりを発見されたことは、彼の心をひどく萎縮させた。彼はまごまごしてしまって、血のついたわけを説明する口実を見出すこともできなかった。
「どうしてそんなもんがついたのかなあ、とに角(かく)汚いからよく洗っといておくれよ……それからと、今日誰か訪ねて来なかったかい?」