Japanische Klassiker mit Furigana
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やまつばき
山椿
山本 周五郎
Lesen Sie 山椿 (やまつばき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.911 Zeichen · 32 Bildschirme
「私にはわかりません、どういう訳なんです」
「宜しい、わかるように云おう、だがちょっと待って呉れ」
主馬は足早に出ていった。なにをしにいったものか、やや暫く時間をとって、戻って来たときには娘をひとり伴れていた。
「待たせて済まなかった」
こう云いながら伴れて来た娘を良三郎の左へ、自分は二人の中間へ坐った。
「ひきあわせる者がある榎本、私の遠縁に当る娘で梶井きぬというのだ。見て呉れ」
きぬという名に良三郎は身震いをした。そして怯えたように振返った。――きぬであった。色を変えてああと云う良三郎を、きぬは涙の溢れる眼で見上げた。
「おまえの信じたとおりだったね、きぬ」
主馬は低い声でそう云った。
「榎本は才能のある人間だった、きぬの考えていたよりも、遙かに高くそれを証拠だてた、恋というものは、ときによると人を堕落させる、だがときによるとこんなに、すばらしく人を生かす、……恋をするなら、こうありたいものだね」
きぬはくくと噎びあげた、良三郎も手で面を掩った。
「おめでとう、きぬ――おめでとう、榎本、とうとう二人の日が来た、勝ったね」
主馬は彼等を残してそこを出た。そして方丈へ寄った、二年間きぬを預かって貰った礼と、もう暫くの世話を頼みに、――それから、たいそう爽やかに楽しそうな顔をして寺を出ていった。