Japanische Klassiker mit Furigana
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さんけいにいくるひとびと
山谿に生くる人々
葉山 嘉樹
Lesen Sie 山谿に生くる人々 (さんけいにいくるひとびと) von 葉山 嘉樹 (はやまよしき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.699 Zeichen · 67 Bildschirme
日々の苦悩に満ちた生活、正義だとか、善だとか、そんなものは、この地上から姿を消してしまい、その上、虫のように「生きる」という、単なる事柄さえも、悪智慧を働かさねば困難な時代、そして、日々夜々、人間がそんな風な不合理な死に対して、無関心であり得るはずがない、残酷な「死」に対して、無感覚になっている時代。そして多くの人々は、もう、ものを考えようとさえしなくなった時代。
そんな時に、一分でも二分でも、カッとなって、ただ一つ、緑屋を救わねばならぬ、という一つの気持に統一されたのを、珍らしい事だと思ったのだった。
「山が来ます。すぐ出て下さい」
と、大山は、緑屋に飛び込みざま、怒鳴るように言った。
「ハッパですか」
と、旅の人らしく、弁当を食べていた、二人連れの男が大山に訊いた。
「滅相もない。ハッパなんかじゃないんです。山が来るんです。早く出て下さい。話は外でします」
と、大山は誘い出すように、表に飛び出して、
「山が来るんです。六十尺位の高さの山が来るんです。報償道路で止まらねば、この家は埋めちまいます。おかみさん、早く出て下さい。そして、こっちへ来て、山を見てて下さい」