Japanische Klassiker mit Furigana
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ばけものばなし
岸田劉生随筆集
岸田 劉生
Lesen Sie 岸田劉生随筆集 (ばけものばなし) von 岸田 劉生 (きしだりゅうせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.344 Zeichen · 30 Bildschirme
別に画にみるようなトゲトゲはないが短かい角はある。髪はザン切りにしていた。それがひどく汚れた印袢天風のものを着て、汚れたひもを帯の代りに締めている。胸が少しはだけているがその皮膚はやはり顔と同様桜海老である。手はだらんと下げていたがやはり同じ色と感じを持っている。そいつが実に黙って椽側の外に立っているのだ、私はこれはいけない、イヤナものが来たと、全く心底から思った。この感じは恐らくこういうものを見た時の実際の感じに近いと私はいつも思っている。妻や何かに知らせて、大さわぎしたら、座敷へ上って来るだろう、どうしようかと思っていると、忽ち妻がひどい金切声で「どうしましょう、あんなものが!」といった。これを聞くと同時に私は一足とびにすみの柱にかじりつく、皆も飛んで来て、私の上からしがみつく。するとその鬼が、上って来て、一人一人上からはがして行くのでないかという恐怖が全く実感的であった。それで眼が醒めたのだがこの時の妻の呼び声その言等かなり実際的なもののように私は思うのである。
ばけもの談大分永くつまらぬ事をかいた、この辺でこのばけものも消えようと思う。
(大正十三年八月二日記)