Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あるおんなのしょうがい

嵐・ある女の生涯

島崎 藤村

Lesen Sie 嵐・ある女の生涯 (あるおんなのしょうがい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 47.846 Zeichen · 96 Bildschirme

Aozora Bunko

「まだお母さんはそんな夢を見てるんですか」

それはお三輪が念を押した時に、伜の言った言葉だ。彼女には、それほど世が移り変ったとは思われなかった。

蓮池はすぐ眼にあった。僅かに二輪だけ花の紅く残った池の中には、青い蓮の実の季節を語り顔なのがあり、葉と葉は茂って、一面に重なり合って、そのいずれもが九月の生気を呼吸していた。お三輪はその藤棚の下の位置から、「池の茶屋」とした旗の出ている方を眺めながら、もう一度休茶屋の近くへ引き返して来た。

その時になって見ると、お三輪が浦和から胸に描いて来たように、落ちついた心持に帰れるような場所は、ちょっとそこいらに見当らなかった。どうして黒柿の長手の火鉢や、古い馴染の箪笥はおろか、池の茶屋の料理場の片隅に皆の立ち働くところを眺めることさえ邪魔になるように思われて、ゆっくり腰の掛けられそうな椅子一つ彼女を待っていなかった。

休茶屋の近くに古い格子戸のはまった御堂もあった。京橋の誰それ、烏森の何の某、という風に、参詣した連中の残した御札がその御堂の周囲にべたべたと貼りつけてある。高い柱の上にも、正面の壁の上にも、それがある。