Japanische Klassiker mit Furigana
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あらし
嵐
島崎 藤村
Lesen Sie 嵐 (あらし) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 54.007 Zeichen · 108 Bildschirme
「新橋の手前までやってください。」
と、私は坂の上に待つ運転手に声をかけて、やがて車の上の人となった。肥った末子は私の隣に、やせぎすな次郎は私と差し向かいに腰掛けた。
「きょうは用達だぜ。次郎ちゃんにも手伝ってもらうぜ。」
「わかってるよ。」
動いて行く車の上で、私たちは大体の手はずをきめた。
「末ちゃんは風呂敷を忘れて来やしないか。」
と、私が言うと、末子は車の窓のそばから黒い風呂敷を取り出して見せた。
私たちを載せた車は、震災の当時に焼け残った岡の地勢を降りて、まだバラック建ての家屋の多い、ごちゃごちゃとした広い町のほうへ、一息に走って行った。町の曲がり角で、急に車が停まるとか、また動き出すとか、何か私たちの乗り心地を刺激するものがあると、そのたびに次郎と末子とは、兄妹らしい軽い笑みをかわしていた。次郎が毎日はく靴を買ったという店の前あたりを通り過ぎると、そこはもう新橋の手前だ。ある銀行の前で、私は車を停めさせた。
しばらく私たちは、大きな金庫の目につくようなバラック風の建物の中に時を送った。
「現金でお持ちになりますか。それとも御便利なように、何かほかの形にして差し上げるようにしましょうか。