Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あらし

嵐

島崎 藤村

Lesen Sie 嵐 (あらし) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 54.007 Zeichen · 108 Bildschirme

Aozora Bunko

母親のない幼い子供らをひかえるようになってから、三年もたつうちに、私はすでに同じ思いに行き詰まってしまった。しかし、そのころの私はまだ四十二の男の厄年を迎えたばかりだった。重い病も、老年の孤独というものも知らなかった。このまますわってしまうのかと思うような、そんな恐ろしさはもとより知らなかった。「みんな、そうですよ。子供が大きくなる時分には、わがからだがきかなくなりますよ。」と、私に言ってみせたある婆さんもある。あんな言葉を思い出して見るのも堪えがたかった。

「とうさん、どこへ行くの。」

ちょっと私が屋外へ出るにも、そう言って声を掛けるのが次郎の癖だ。植木坂の下あたりには、きまりでそのへんの門のわきに立ち話する次郎の旧い遊び友だちを見いだす。ある若者は青山師範へ。ある若者は海軍兵学校へ。七年の月日は私の子供を変えたばかりでなく、子供の友だちをも変えた。

居住者として町をながめるのもその春かぎりだろうか、そんな心持ちで私は鼠坂のほうへと歩いた。毎年のように椿の花をつける静かな坂道がそこにある。そこにはもう春がやって来ているようにも見える。

私の足はあまり遠くへ向かわなかった。