Japanische Klassiker mit Furigana
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じゅんさじしょく
巡査辞職
夢野 久作
Lesen Sie 巡査辞職 (じゅんさじしょく) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 31.907 Zeichen · 63 Bildschirme
のよい生活ぶりをコッソリと覗いている……といったような噂がいつとなく村中のヒソヒソ話に伝わり拡がった。ことに依ると深良屋敷の老夫婦殺しは、草川巡査かも知れん……なぞと飛んでもない事を云う者すら出て来るようになった。
その中に秋口になって、山々の木立に法師蝉がポツポツ啼き初める頃になると、深良屋敷の一知夫婦が揃いの晴れやかな姿で町へ出て、生れて初めての写真を撮った。無論それは二人の新婚の記念にするのだと云っていたが、その写真が出来て来たのを、区長の家で偶然に見せてもらった草川巡査は、何故かわからないが非常に緊張した、寧ろ悲痛な表情で一心に凝視していた。その写真屋の名前を何度も何度も見直してシッカリと記憶に止めてから、妙に剛ばった笑い顔で鄭重に礼を云って区長の家を出た。何かしきりに考えながらも足取だけは小急ぎに国道へ出たが、ちょうど通りかかった乗合自動車を見ると、急に手を挙げて飛乗って町へ出た。記憶している名前の写真屋を直ぐに尋ね当てて、極く内々で一知夫婦の写真の焼増を一枚頼んだ。
するとちょうど助手の不注意で一枚余分に焼いたのが在ったので、草川巡査は久し振りに満足そうな笑顔を洩した。