Japanische Klassiker mit Furigana
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こうせつきょうほうずえ
巷説享保図絵・つづれ烏羽玉
林 不忘
Lesen Sie 巷説享保図絵・つづれ烏羽玉 (こうせつきょうほうずえ) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 365.120 Zeichen · 728 Bildschirme
「そうだ。惚れてやがる。お駒のやつ、あの磯五てえ生っ白え野郎に、首ったけなんだな。ちっ、道理で――だが、待てよ、こりゃあ相手がよくねえ。うむ、気をつけるとも。気をつけるとも。おれあ磯五に、しっかりこの眼を光らせているからな――」
さくらが蕾を持つころまで、お高は、同じ金剛寺坂の家にいながら、毎夕かけ違ってばかりいて、若松屋惣七としみじみ話をかわすこともなく過ぎたのだった。
呼ばれて、奥の茶室へ行ってみると、このごろは他行がちの若松屋惣七が、この午後はめずらしく家にいて、いつものように、帳面のうずたかい経机をまえに、端然とすわっていた。お高がはいって行くと、顔をななめに、かすんでいる眼を上げた。
仕事のことは、相変わらずお高が書状を披見して、返書を書いて片づけてきていた。いまはこれという取り引きもなく、わりに静かな日がつづいていた。
若松屋惣七が、自分と磯五とお高の問題をそのままにしておいて、いつまでたっても積極的な態度に出ようとしないのが、お高には、不幸といえば不幸であった。しかし、このあいまいな状態は、かえって若松屋惣七に対するお高の感情を培っているのだ。