Japanische Klassiker mit Furigana
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こうせつきょうほうずえ
巷説享保図絵・つづれ烏羽玉
林 不忘
Lesen Sie 巷説享保図絵・つづれ烏羽玉 (こうせつきょうほうずえ) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 365.120 Zeichen · 728 Bildschirme
お高は、何をしていても、あたまが若松屋惣七のことでいっぱいなのを知っている。ゆっくり話し合わないけれど、いや、ゆっくり話し合わないからこそ、若松屋惣七は、お高の中で生きているのだ。
お高は、この情感を食べ物にして生活していた。女は、こういう情感で生きているとき、いちばん美しく見えるのだ。が、お高は一日のうちに、やせて見えたりふとって見えたり、さびしそうに見えたり、楽しそうに見えたりする女なのだ。
はいって来たお高は、そのさびしそうに見えるお高だ。若松屋惣七には、はっきりは見えないが、衣ずれのぐあいや何か、風のように立ってくる感じでわかるのだ。
「お高か。どうした。元気がないぞ」
若松屋惣七は、武士の前身を出して、しっかり肘を張って、きちんとそろえた膝を向けた。
「そうでございますか。じぶんで何ともございませんが――」
「忙しいか」
「いいえ。ひまでございます」
「気散じの旅にでも出ると、いいかもしれぬの」
「はい」
「居は気をうっすと申して、人間はときおり場所をかえぬと、気が欝するものじゃ」
「さようでございますか」
若松屋惣七は、近いうちに、武士時代の友人がひとりみえるかもしれぬというようなことをいった。