Japanische Klassiker mit Furigana
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こうせつきょうほうずえ
巷説享保図絵・つづれ烏羽玉
林 不忘
Lesen Sie 巷説享保図絵・つづれ烏羽玉 (こうせつきょうほうずえ) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 365.120 Zeichen · 728 Bildschirme
若松屋惣七は、その、うっすらと小雨の吹きこむ縁側にあぐらをかいて足の爪を切りながら、うしろの敷居にしゃがんで障子にもたれていたお高を、ちょっとふり返った。お高は蜘蛛の巣のような、細い白く光る雨あしをぼんやり見ていた眼を、あわてて伏せた。
お高は、若松屋惣七の屋敷を出て、どこかへ行ってしまうといって雑司ヶ谷の雑賀屋の寮から帰って来たくせに、まだこの金剛寺坂にずるずるべったりに厄介になっているのだ。しかし、もう若松屋の女番頭として、金勘定や帳簿を見ているわけではなく、いわば客分として、若松屋惣七のいうままに、逗留しているかたちだった。
お高がこたえないので、若松屋惣七がつづけた。
「一日延ばしに延ばして参ったが、もう延ばせぬ。こんどこそは、行かずばなるまい。龍造寺殿は、あまりに行く行くというて行かぬので怒っておらるるかもしれぬぞ。とにかく、具足屋は立派に芽を吹きました。何から何まで、龍造寺殿のおかげじゃ。繁昌ぶりを見て、とっくりとお礼を申し上げたいと思う。あすたちます」
お高は、やっといった。
「ごきげんようおいでなされませ」
「ふん。それだけの挨拶か」
「お達者で――」