Japanische Klassiker mit Furigana
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こうせつきょうほうずえ
巷説享保図絵・つづれ烏羽玉
林 不忘
Lesen Sie 巷説享保図絵・つづれ烏羽玉 (こうせつきょうほうずえ) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 365.120 Zeichen · 728 Bildschirme
「いえ、なあに」文次はまごついた。「何も今日とは限りません。はいいずれそのうち、またゆっくりと寄せてもらいましょう」
「でも、せっかく――」
「へへへ、つい御近所まで来たもんですから」
「あの、御用は?」
「へい、いや、師匠によろしく」
「ほほほ、お名前は――」
「名なんざあ何でもようがさあ」
このところ文次さんざんのていたらくだ。逃げるようにとび出して、うしろ手に格子をぴしゃり――ほっとすると同時に、急にしっかりした見得が文次の胸を衝いた。
「そうだ、あいつに違えねえ、たしかお蔦とかっていったっけなあ」
と戸外で文次が、きっと何か思案を決めたらしかったが、これは家内の女は知らないから、しばらく呼吸を凝らしていると、どうやら文次も立ち去ったようすで、小窓からのぞけば、水のようなうっすらとした宵闇が三味線堀を渡って来るばかり、人影はない。
女はそっと里好の枕べにしゃがんで、
「さあ、うまくいきましたよ。お起きなさいな」
大事をとって声を忍ばせたが、里好の返事がないので、もう一度くり返そうとすると、すうすうと他愛のない鼾、いい気なものだ。里好先生、時ならぬ熟睡の最中とある。