Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

ほ

帆

宮本 百合子

Lesen Sie 帆 (ほ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.973 Zeichen · 25 Bildschirme

Aozora Bunko

気の好い尾世川は、俄に恐縮して、

「いやこれはどうも! お疲れでしょう。ついどうも好い気持になっちゃって!」

抜け上った広い額を押え、急に自分の坐っている机の周囲を見廻すような格好をした。何か口を濡すものを、本能的にさがすのであったが、尾世川の部屋では、冬でも火鉢に火がある時とない時とむらがある。そんな貧乏生活であった。

藍子がそばをおごったりして夜までいるようなことがあった。

彼女がまた、稽古の間に、

「何だかいやに寒くなっちゃった。風呂へいらっしゃいませんか」

と誘うような気質であったから、尾世川の、どんな貧乏も一向苦にせず、寒中セルと褞袍で暮しながら額のあたりに貧の垢ではない微かな艶を失わない彼の生活ぶりと、どこかでうまが合うのであろう。

若きヴェルテルの悩みや名家選集をもって、藍子は二年の間尾世川に教えて貰ったと云うより寧ろ教えさせて来たのであった。

三月の第一火曜日の午後、藍子は小日向町へ出かけて行った。尾世川が牛込の方から此方へ越して来てから、藍子も、同じ小石川の向う側の高台へ部屋を見つけたのであった。鼠坂を登って、右へ曲る。煙草屋の二階に尾世川は暮していた。