Japanische Klassiker mit Furigana
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ひらがげんないとりものちょう
平賀源内捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 平賀源内捕物帳 (ひらがげんないとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.367 Zeichen · 36 Bildschirme
唐館の中は夏でも膚寒いほどの涼しさだが、殺されてから余程時日が経つと見え、肉はすッかり腐り切って、触ったらズルズルと崩れ落ちそう。左側の鬢の毛が顳から離れて皮膚をつけたまま髷もろとも右の横顔へベッタリと蔽いかぶさっている。
源内先生は、入口に近いところで中腰になったまま、怯々とこの物凄い光景を眺めていたが、間もなく何時ものような落付いた顔付になり、ノソノソと死骸の方へ戻って来て、
「案の定だッた。江戸でお鳥の殺されたのが七月の十五日。……津国屋の主人から利七が同じ七月の十五日に手紙で誘い出されたまま帰って来ないということを聞いた時、利七はもうこの世のものでなかろうと予察したが、矢張りおれが見込んだ通りだった。……どうも、気の毒なことをした。こんな破寺のようなところで、こんな姿態で殺されたんでは利七だって浮ばれない。……おれがやって来なかったら、この先、幾年こんな惨めな恰好で放ッて置かれるか知れたもんじゃない。これも矢ッ張り縁のある証拠。……南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏。町人にしては濶達ないい気性の男だッたが、惜しい男を死なせてしまった。お前がこんな態で死んだと聞いたら、お種さんは涙の壺を涸らすこッたろう。