Japanische Klassiker mit Furigana
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こうふくのはさみ
幸福のはさみ
小川 未明
Lesen Sie 幸福のはさみ (こうふくのはさみ) von 小川 未明 (おがわみめい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.458 Zeichen · 9 Bildschirme
どんな人がそこにすわっているのだろうと、正吉は思いながら、だんだんと、その露天の方に近づいてきました。風に吹かれて、落ち葉は、その火の周囲に渦巻いていました。しかし、すわっている人は、じっとして動きませんでした。
正吉は、一人の女が、さびしそうに往来を見つめてすわっているのを見ました。そして、提燈のうす暗い火影で、その顔を見ますと、恋しいお母さんに、まったくよく似ているのでありました。
その女は、前にむしろを敷いて、はさみをならべていました。そのはさみは、着物を縫うときに入り用のはさみでありました。
正吉は、しばらく、その女を見つめてたたずみました。そして、見れば見るほど、恋しいお母さんの顔によく似ていましたので、とうとう自分を忘れて、正吉は「お母さん。」といって、そのそばに、駆け寄りました。
すると、その女は、さびしく笑いました。そして、しっかりと正吉を抱き寄せました。
「私は、坊やのお母さんじゃありません。その証拠に、私の頭の髪は、こんなに灰色がかっています。しかし私は、坊がさびしいのをよく知っている。私が、おまじないをしてあげる。もうこれから、お父さんは、けっして、こんな風の吹く暗い晩に、坊をお使いになぞ出しはしないだろう……。