Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

まぼろしのたて

幻影の盾

夏目 漱石

Lesen Sie 幻影の盾 (まぼろしのたて) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.372 Zeichen · 45 Bildschirme

Aozora Bunko

ウィリアムは髪を見詰めていた視線を茫然とわきへそらす。それが器械的に壁の上へ落ちる。壁の上にかけてある盾の真中で優しいクララの顔が笑っている。去年分れた時の顔と寸分違わぬ。顔の周囲を巻いている髪の毛が……ウィリアムは呪われたる人の如くに、千里の遠きを眺めている様な眼付で石の如く盾を見ている。日の加減か色が真青だ。……顔の周囲を巻いている髪の毛が、先っきから流れる水に漬けた様にざわざわと動いている。髪の毛ではない無数の蛇の舌が断間なく震動して五寸の円の輪を揺り廻るので、銀地に絹糸の様に細い炎が、見えたり隠れたり、隠れたり見えたり、渦を巻いたり、波を立てたりする。全部が一度に動いて顔の周囲を廻転するかと思うと、局部が纔かに動きやんで、すぐその隣りが動く。見る間に次へ次へと波動が伝わる様にもある。動く度に舌の摩れ合う音でもあろう微かな声が出る。微かではあるが只一つの声ではない、漸く鼓膜に響く位の静かな音のうちに――無数の音が交っている。耳に落つる一の音が聴けば聴く程多くの音がかたまって出来上った様に明かに聞き取られる。盾の上に動く物の数多きだけ、音の数も多く、又その動くものの定かに見えぬ如く、出る音も微かであららかには鳴らぬのである。