Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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まぼろしのたて

幻影の盾

夏目 漱石

Lesen Sie 幻影の盾 (まぼろしのたて) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.372 Zeichen · 45 Bildschirme

Aozora Bunko

花びらは雪と乱れて、ゆかしき香りの一群れが二人の足の下に散る。…… Druerie の時期はもう望めないわとウィリアムは六尺一寸の身を挙げてどさと寝返りを打つ。間にあまる壁を切りて、高く穿てる細き窓から薄暗き曙光が漏れて、物の色の定かに見えぬ中に幻影の盾のみが闇に懸る大蜘蛛の眼の如く光る。「盾がある、まだ盾がある」とウィリアムは烏の羽の様な滑かな髪の毛を握ってがばと跳ね起る。中庭の隅では鉄を打つ音、鋼を鍛える響、槌の音やすりの響が聞え出す。戦は日一日と逼ってくる。

その日の夕暮に一城の大衆が、無下に天井の高い食堂に会して晩餐の卓に就いた時、戦の時期は愈狼将軍の口から発布された。彼は先ず夜鴉の城主の武士道に背ける罪を数えて一門の面目を保つ為めに七日の夜を期して、一挙にその城を屠れと叫んだ。その声は堂の四壁を一周して、丸く組み合せたる高い天井に突き当ると思わるる位大きい。戦は固より近づきつつあった。ウィリアムは戦の近づきつつあるを覚悟の前でこの日この夜を過ごしていた。去れど今ルーファスの口から愈七日の後と聞いた時はさすがの覚悟も蟹の泡の、蘆の根を繞らぬ淡き命の如くにいずくへか消え失せてしまった。