Japanische Klassiker mit Furigana
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まぼろしのたて
幻影の盾
Lesen Sie 幻影の盾 (まぼろしのたて) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.372 Zeichen · 45 Bildschirme
乗り斃した馬の鞍に腰を卸して、右手に額を抑えて何事をか考え出さんと力めている。死したる人の蘇る時に、昔しの我と今の我との、あるは別人の如く、あるは同人の如く、繋ぐ鎖りは情けなく切れて、然も何等かの関係あるべしと思い惑う様である。半時なりとも死せる人の頭脳には、喜怒哀楽の影は宿るまい。空しき心のふと吾に帰りて在りし昔を想い起せば、油然として雲の湧くが如くにその折々は簇がり来るであろう。簇がり来るものを入るる余地あればある程、簇がる物は迅速に脳裏を馳け廻るであろう。ウィリアムが吾に醒めた時の心が水の如く涼しかっただけ、今思い起すかれこれも送迎に遑なきまで、糸と乱れてその頭を悩ましている。出陣、帆柱の旗、戦……と順を立てて排列して見る。皆事実としか思われぬ。「その次に」と頭の奧を探るとぺらぺらと黄色な※(「(諂-言)+炎」、第3水準1-87-64)が見える。「火事だ!」とウィリアムは思わず叫ぶ。火事は構わぬが今心の眼に思い浮べた※(「(諂-言)+炎」、第3水準1-87-64)の中にはクララの髪の毛が漾っている。何故あの火の中へ飛び込んで同じ所で死ななかったのかとウィリアムは舌打ちをする。