Japanische Klassiker mit Furigana
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ひろば
広場
宮本 百合子
Lesen Sie 広場 (ひろば) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.809 Zeichen · 31 Bildschirme
その大きい衣裳箪笥の左側の小さい棚が、このホテル暮しの彼女たちの食器棚になっているのであった。帰る時が目前に見えてから素子は焦立たしいような執着で朝から晩まで机と本にとりついていて、日々のそんな用は朝子のうけもちのようになった。
「じゃ行って来る、ほかに用ない?」
「私はないよ」
ホテルを出ると、朝子はさっき来たとは反対の方角へ急ぎもせずに歩いて行った。裏通りになるその辺の車道は古風な石敷道で、永い歳月のうちに踏みへらされた敷石のどれもがいろんな不規則な形に角を磨滅されている。そのごろごろした石と石とのすき間はひろく深くて歩き難く、冬日のなかに何処となし馬糞のにおいが漂った。重い蹄鉄をうった荷馬が車輪をその石敷道の上ではね上らせながら通って行くと、元気よく石をうつ蹄の音や車輪の音が灰色っぽい左右の建物に反響して、再び下を歩いている朝子のところまでかえって来る。何かの塀で行き止りになった小路の左側に石油販売所があって、もうそこの歩道には二十人ばかりの列が出来ている。朝子はその列の尻尾についた。油じみた販売所の鉄扉は開いていて、鞣前垂の男の姿がチラついているが、まだ売り出してはいない。