Japanische Klassiker mit Furigana
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にわをつくるひと
庭をつくる人
室生 犀星
Lesen Sie 庭をつくる人 (にわをつくるひと) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.332 Zeichen · 19 Bildschirme
芽の吹くころになると踏石や捨石が冬がれの中から身を起し、呼吸をしてくるように思えた。すくなくとも何かの鋭さを現わしたが、それは木の芽草の芽が浮き出させてくるのかも知れない。浅い芽の色が蒼古たる石を上と下とから形を描き合せるのかも知れぬ。
石は絶えず濡れざるべからずというのは、春早いころがその鋭さを余計に感じる時であるからであろう。水の溜まる石、溜まるほどもない微かな中くぼみのある石、そして打水でぬれた石は野卑でなまなましく、朝の旭のとどかぬ間の石の面の落着きの深さは譬えようもなく奥ゆかしい。或いは夜来の雨じめりでぬれたのが、空明りを慕うているさまは恋のように仄かなものである。それが飛石であるときは踏みかねる心をもつ。朝の間は石の心も静まっていると見えるからである。わたくしはある朝、蒼黒い棄石のきわに一本の蕗の薹を眺め、凝然と驚いて瞠って眺めた。それは一本のかんざしを持った何か巨大な生きものの、微笑み跼まるのに眼がふれたからであった。石は庭ぬしの悲しい時は悲しそうな表情をして見せ、機嫌よいときはかれも闊達で快然としていた。一朝わが思いならざるときその眼を落すのも、石床蒼古の上に停まるのであったが、それよりも先きにかれは綿々の情に耐えざるの風姿があった。