Japanische Klassiker mit Furigana
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しょみんのたべもの
庶民の食物
小泉 信三
Lesen Sie 庶民の食物 (しょみんのたべもの) von 小泉 信三 (こいずみしんぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 1.974 Zeichen · 4 Bildschirme
、飯が食えるということが、人類にとってどんなに重いことであるかというようなことを、考えさせられる。サンマから佐藤春夫の詩を憶い出していうのではないが、ひとはどうか、私は食事のときに自分の心が感じやすくなっているのを自覚する。よく食事をしながら、人の哀れな身の上や、健気な振舞の話をきいて、涙を落とすことがある。唾腺と涙腺とはなにか特別の関係があるものか。きいてみたことはないが、昔から、箸を投じて落涙するというような話があるから、これは私一人ではないのかもしれぬ。
少年時代住んでいた三田の家の、少し離れた並びに、昔、福沢先生を頼って故郷の中津から出てきたという、豊前屋という相当な米屋があり、夕暮など、近所の裏長屋のおかみさんが、味噌漉を前掛けの下にかくすようにして、その敷居を跨ぐのを、私は見て知っていた。米の一升買いということの意味を、少年の私は解していた。どうかすると、わが家の食事のときに、そんな景色を想い出して、急に喉がつまり、涙の味のする飯のかたまりを、無理に嚥みこんだような記憶がある。
私は政治上あまり好んで民主主義を振り廻すほうではないが、右に書いたような意味で、食物に対する好みは民主的といえるであろう。