Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうどうちゅうそでん
弓道中祖伝
国枝 史郎
Lesen Sie 弓道中祖伝 (きゅうどうちゅうそでん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.647 Zeichen · 19 Bildschirme
で、悠々と酒を飲み、数々の料理に箸をつけた。その間も館内は寂然としていて、全く人の気勢はなく、人家に離れているところから、他に物音も聞こえなかった。充分に腹を養ったため、とみに正次は精気づき、心ものびのびと展がって来た。で、のんびりと部屋を見廻した。
「ほう」とまたも正次は、思わず声を洩らしてしまった。
見れば背後の床ノ間に、倍実筆の山水の軸が、大きくいっぱいに掛けられてあり、脇床の棚の上には帙に入れられた、数巻の書が置かれてあり、万事正式の布置であって、驚くことはなかったが、ただ一つだけ床ノ間に、陰陽二張の大弓と、二十四條の箭を納めたところの、調度掛が置いてあったことが、正次の眼を驚かせた。しかも定紋は菊水であった。
「ム――」と何がなしに正次は唸って、調度掛の前へいざり寄った。
その同じ夜のことであった。異装の武士の大衆が、京の町を小走っていた。人数は三十五人もあったが、いずれも一様に裸体であり、髪は散らして太い縄で、結び目を額に鉢巻し、同じく荒縄を腰に纏い、それへ赤鞏の刀を差し、脚には黒の脛巾を穿き、しかも足は跣足であった。が、その中のは脛へばかり、脛当をあてた者があり、又腕へばかり鉄と鎖の、籠手を嵌めたものがあり、そうかと思うと腰へばかり、草摺を纏った者があった。