Japanische Klassiker mit Furigana
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にじ
彩虹
山本 周五郎
Lesen Sie 彩虹 (にじ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.898 Zeichen · 28 Bildschirme
伊兵衛は体を躱わすとでもいうようにつと起った。それに続くべきさえの言葉の重大さが、光のように彼の感情へ反射したからである。縋りつくようなさえの眼から外向きながら、彼はもういちど、
「家へお帰り」
と云った。
「あとでゆく、そのときあとを聞こう、おれからも話すことがある、いいか」
そして大股に居間のほうへ去った。
海のほうからなまぬるい風が吹いていた。夕立でも来そうな空で、鼠色の断雲が低く北へ北へとながれていた。大手外にある脇田の家を訪ねると、
「登城しております」
ということで、そのまま城へ上った。宗之助は勘定奉行役所で、うず高い書類をまわりに、筆を取ってなにか書き物をしていた。側には腹心の例の三人だけで、他には人がいなかった。
「もうすぐ済むから暫らく待って呉れ」
伊兵衛を見ると彼はそう云って書き物を続けたが、やがて終った物から順に、
「これは作事方へ、これは御船方へ」
と三人に渡し、かれらが出てゆくと、
「待たせて済まなかった」
と云いながら伊兵衛の側へ来て坐った。
「かけ違って暫らく会わなかった、なにか急な用でもあるのか」
「口を飾らずに云うから、其許も言葉の綾なしに答えて貰いたい」