Japanische Klassiker mit Furigana
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いようへん
影を踏まれた女
岡本 綺堂
Lesen Sie 影を踏まれた女 (いようへん) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 23.110 Zeichen · 46 Bildschirme
行灯の火に照らすと、それは薄い金色に光っていた。彼は妻に命じて三宝を持ち出させて、鱗をその上にのせて、うやうやしく床の間に祭った。
「このことはめったに吹聴してはならぬぞ。」と、彼は家内の者どもを固く戒めた。
あくる日になると、ゆうべの風雨の最中に、永代の沖から龍の天上するのを見た者があるという噂が伝わった。伊四郎はそれを聞いて、自分の見たのはいよいよ龍に相違ないことを確かめることが出来た。そのうちに、口の軽い奉公人どもがしゃべったのであろう。かの鱗の一件がいつとはなしに世間にもれて、それを一度みせてくれと望んでくる者が続々押掛けるので、伊四郎はもう隠すわけにはいかなくなった。初めは努めてことわるようにしたが、しまいには防ぎ切れなくなって、望むがままに座敷へ通して、三宝の上の鱗を一見させることにしたので、その門前は当分賑わった。
「あれはほんとうの龍かしら。大きい鯉かなんぞの鱗じゃないかな。」と、同役のある者は蔭でささやいた。
「いや、普通の魚の鱗とは違う。北条時政が江の島の窟で弁財天から授かったという、かの三つ鱗のたぐいらしい。」と、勿体らしく説明する者もあった。