Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
いようへん
影を踏まれた女
岡本 綺堂
Lesen Sie 影を踏まれた女 (いようへん) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 23.110 Zeichen · 46 Bildschirme
――の主人が出張の役人に対してこういうことを話した。
自分は明治以後ここへ移って来たもので、二十年あまりも商売をつづけているが、ここの家には一つの不思議がある。時どきに二階の梯子の下に人の姿がぼんやりと見える。だんだん考えてみると、それが一年に一度、しかも旧暦の八月十五夜に限られていて、当夜が雨か曇りかの場合には姿をみせない。当夜が明月であると、きっと出てくる。どこかの隙間から月のひかりが差込んで、何かの影が浮いてみえるのかとも思ったが、ほかの月夜の晩にはかつてそんなことがない、かならず八月の十五夜に限られているのも不思議だ。人の形ははっきり判らないが、どうも男であるらしい。別にどうするというでもなく、ただぼんやりと突っ立っているだけのことだから、こっちの度胸さえすわっていれば、まず差したる害もないわけだ。
この主人もいくらか度胸のすわった人であったらしい。それにもう一つの幸いは、その怪しいものは夜半に出て、明け方には消える。ことに一年にたった一度のことであるので、細君をはじめ家内の人たちは誰もそれを知らないらしい。あるいは自分の眼にだけ映って、ほかの者には見えないのかも知れないと思ったが、いずれにしても、迂濶なことをしゃべって家内のものを騒がすのもよくない。