Japanische Klassiker mit Furigana
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かげおとこ
影男
江戸川 乱歩
Lesen Sie 影男 (かげおとこ) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 154.133 Zeichen · 310 Bildschirme
そして、首だけを地上に残して、お互いにながめ合えるようにして、かれらの恐怖を最長限に引き延ばそうとしたのだ。
だが、かれらはなぜ叫ばないのであろう。いくら広い邸内といっても、大声をたてれば付近の家や道路に聞こえないこともなかろう。そして、だれかが救い出してくれるかもしれないのだ。それを、あんなにだまりこんでいるのは? ああ、わかった。外からは見えぬが、口の中に布ぎれか何かが丸めて押しこんであるのだろう。それを吐き出す力がなくて、口がきけないのであろう。
影男はいまにも木陰から飛び出していって、地面を掘りおこし、ふたりを助けようとした。そして、一歩踏み出そうとしたとき、向こうの茂みが、サーッと音を立てた。風ではない。大きなヘビのようなものが近づいてくる音だ。小間使い千代のことばを思い出した。ヘビではない、この屋敷の主人川波良斎が、深夜仇敵をこらしめるために、忍びよってきたのにちがいない。
かき分けられた茂みに、薄黒い人の姿が現われた。茶っぽいネルの寝巻きを着た四十男だ。影男はすばやく木の幹に隠れたし、やみの保護色に包まれているので、相手は少しも気づかない。