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Japanische Klassiker mit Furigana

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かれがころしたか

彼が殺したか

浜尾 四郎

Lesen Sie 彼が殺したか (かれがころしたか) von 浜尾 四郎 (はまおしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 41.336 Zeichen · 83 Bildschirme

Aozora Bunko

俺が、生命を捨て、名誉を捨て、そして得たるものは何だろう。憎い憎い然し可愛い可愛いあの道子だ。おお道子! なつかしい道子。俺が生命をかけた此の恋。我が生命。我が凡て! それがお前だ。

お前は此の世では俺を弄んだ。そうだ、この若い俺の心を何の遠慮もなくかきむしり、恋を燃えたてさせながら、而も完全に飜弄した。

然し、死屍となったお前は、何という無力な奴だ。何という気の毒な女だ。

あの豊麗な肉体が、ぎりぎりと縛り上げられて、悶え死んだ瞬間から、お前は完全に俺のものなのだ。そうだ、天下は皆、お前は俺のものだったと信じて居る。この事件が人々の頭に残る限り、永遠にお前の名はこの俺の名と共に謳われるであろう。

成程お前の体は、夫の側に眠るかも知れない。けれどもお前は、ほんとうのお前は俺と共に居る。夫に叛いて俺の側に居る。不貞の妻、姦通者! こういう永遠の烙印を其の額にやきつけられながら、永久に俺と共に地獄に苦しまねばならない。おお、何たる喜ばしさであろう。

憎いが然し、可愛いお前を、此の地上から失してしまった今、俺は何として生きて行こう。こうやってただ生きた屍となって何年生きて行く甲斐があろう。