Japanische Klassiker mit Furigana
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かれはだれをころしたか
彼は誰を殺したか
浜尾 四郎
Lesen Sie 彼は誰を殺したか (かれはだれをころしたか) von 浜尾 四郎 (はまおしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.147 Zeichen · 27 Bildschirme
いや、楽器をおいて、笑いさざめく声がよく聞えた。そうして弾きはじめると音楽は一層幸福そうにひびいて来た。
彼は、「春のソナタ」を書斎の中でききながら幾度歯を食いしばったことだろう。
彼は舌打をしながら、ベートホーヴェンを呪った。それ程、二人のすきな曲は、この奏鳴曲だったのである。
一方吉田は遠慮なく綾子を音楽会にさそいに来る。妻は平気で一緒に行く。そうして夜おそくなって帰って来る。
「一体今までどこで何して来たのだ」
「だからS氏のコンサートって申し上げたでしょう。マーラーのシンフォニーって素的ね。何だかむずかしくって判らないけれど」
「何を云ってやがるんだ」と彼は心で思った。
「おそくなって申訳がございません位のことを云ったらよかろう」
斯う思ってももう口にさえ出し得ない男だった。
吉田と妻が人目を憚らずに出歩くことは考えても堪らないことだったが、しかし、彼は之に口をださなかった。
綾子に対しても吉田に対しても、一言も注意すらしなかった。
云ったら綾子は軽蔑の笑いで一蹴するだろう。子供とはいかぬ迄もまるで年下の吉田に云うことはなお更はずかしいことだった。