Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ふっかつさい

復活祭

久生 十蘭

Lesen Sie 復活祭 (ふっかつさい) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.018 Zeichen · 23 Bildschirme

Aozora Bunko

夜が明けると小原はこの船でアメリカへ帰ってしまう。このまま別れたら、これからの日々はおそろしく辛いものになるだろう。そんなことを考えながら小原の船室の前まで行くと、まだ起きているのだとみえ、バア・ルームのあのすばらしい瞬間を思いださせるような、やわらかな光がほんのりと窓から洩れている。のぞいてみると、小原はナイト・ガウンを着てベッドの端に掛け、綴りにつづって手のほどこしようもない荒布のようなカッタウェーの裏絹を、そここことひきよせながら骨を折ってとじつけていた。

鶴代は船室の鉄の側壁に凭れて眼を伏せた。小原の生活の裏にもやはり人知れぬ辛さがあるのだろう。もしそうなら、いまの自分の気持をわかってもらえるかもしれない。「愛していた」などという言葉をつかわずに自分の気持をつたえられないものだろうか。この扉のむこうの世界と結びつくことは出来ないのだろうか。この船室へ身を投げこむことは許されないのだろうか。あのとき自分は十二で小原は三十六だった。いまは三十二と五十六。おかしいことはない。この扉をあけさえすれば、どんな男のそばででも味わえないような幸福に身をまかせることができる。