Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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びしょう

微笑

横光 利一

Lesen Sie 微笑 (びしょう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.911 Zeichen · 50 Bildschirme

Aozora Bunko

そうではないと思うよりは、難しいことであると梶は思った。それにしても、いまも梶には分らぬことが一つあった。人間は誰でも少しは狂人を自分の中に持っているものだという名言は、忘れられないことの一つだが、中でもこれは、かき消えていく多くの記憶の中で、ますます鮮明に膨れあがって来る一種異様な記憶であった。

それも新緑の噴き出て来た晩春のある日のことだ。

「色紙を一枚あなたに書いてほしいという青年がいるんですが、よろしければ、一つ――」

知人の高田が梶の所へ来て、よく云われるそんな注文を梶に出した。別に稀な出来事ではなかったが、このときに限って、いつもと違う特別な興味を覚えて梶は筆を執った。それというのも、まだ知らぬその青年について、高田の説明が意外な興味を呼び起させるものだったからである。青年は栖方といって俳号を用いている。栖方は俳人の高田の弟子で、まだ二十一歳になる帝大の学生であった。専攻は数学で、異常な数学の天才だという説明もあり、現在は横須賀の海軍へ研究生として引き抜かれて詰めているという。

「もう周囲が海軍の軍人と憲兵ばかりで、息が出来ないらしいのですよ。