Japanische Klassiker mit Furigana
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びしょう
微笑
横光 利一
Lesen Sie 微笑 (びしょう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.911 Zeichen · 50 Bildschirme
「僕のは幾ら作っても作っても、落される方だが、栖方のは落とす方だからな、僕らは敵いませんよ。」
悄然として呟く紺背広の技師の一歩前で、これはまた溌剌とした栖方の坂路を降りていく鰐足が、ゆるんだ小田原提灯の巻ゲートル姿で泛んで来る。それから三笠艦を見物して、横須賀の駅で別れるとき、
「では、もう僕はお眼にかかれないと思いますから、お元気で。」
はっきりした眼付きで、栖方はそう云いながら、梶に強く敬礼した。どういう意味か、梶は別れて歩くうち、ふと栖方のある覚悟が背に沁み伝わりさみしさを感じて来たが、――
疎開先から東京へ戻って来て梶は急に病気になった。ときどき彼を見舞いに来る高田と会ったとき、梶は栖方のことを云い出してみたりしたが、高田は死児の齢を算えるつまらなさで、ただ曖昧な笑いをもらすのみだった。
「けれども、君、あの栖方の微笑だけは、美しかったよ。あれにあうと、誰でも僕らはやられるよ。あれだけは――」
微笑というものは人の心を殺す光線だという意味も、梶は含めて云ってみたのだった。それにしても、何よりも美しかった栖方のあの初春のような微笑を思い出すと、見上げている空から落ちて来るものを待つ心が自ら定って来るのが、梶には不思議なことだった。