Japanische Klassiker mit Furigana
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びしょう
微笑
豊島 与志雄
Lesen Sie 微笑 (びしょう) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.995 Zeichen · 43 Bildschirme
窖のような薄暗い寒い歩廊の上に佇んで電車を待ってる間、私達には其処に居合わす人々が親しい友人のように思えて来た。皆が寒さに肩をすくめていた。恐らく皆腹も多少空いているようだった。皆何かがほしそうな眼付をしていた。そして皆陰欝な顔をしていた。もし皆が集まって晴々と談笑することが出来たら、その寂しい夜更けの時間もどんなにか愉快になるだろう。特に私達二人はどんなに愉快だろう。
「もっとどうにかいい結果が上らないものでしょうかね。」そう度々私達は、上野の公園前でくり返した。そして知らず識らず私達は大胆になり、執拗になっていった。
或る日私は「いい結果」に出逢った。歩廊に立って二三人の乗客を物色していると、紡績の着物と羽織とを着て毛糸の襟巻に顔を埋めた三十四五の女が眼についた。一度たしかに見たことのある姿だった。
「今日は一つ冒険をしてみよう」と私は思った。
其処へ村瀬が急いでやって来た。「やあ」と彼は云った。するとその声に紡績の女がふり向いて、ちらと微笑をした。私はそれに力を得た。彼女は私達のことを知ってるのかも知れないと思った。
やがて私は彼女の方へ何気ない風で近づいて行った。