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Japanische Klassiker mit Furigana

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ただなおきょうぎょうじょうき

忠直卿行状記

菊池 寛

Lesen Sie 忠直卿行状記 (ただなおきょうぎょうじょうき) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 23.602 Zeichen · 47 Bildschirme

Aozora Bunko

すると、老人は人の好きそうな微笑を示しながら、

「殿は近頃、いかい御上達じゃ。老人ではとてもお相手がなり申さぬわ」といった。

と、今まで晴れやかに続けざまの快勝を享楽していたらしい忠直卿の面を、暗欝の陰影が掠めたかと思うと、彼はいきなり立ち上って、二人の間に置かれている碁盤を足蹴にした。盤上に並んでいた黒白の石は跳び散って、その二、三は丹後の顔を打った。

丹後は勝負に勝ちながら、怒り出した主君の心を解するに苦しんだ。彼は、咄瑳に立ち去ろうとする忠直卿の袴の裾を捕えながら、

「いかが遊ばされた! 殿には御乱心か。どのような御趣意あって、丹後めにかような恥辱を与えらるる?」と、狂気のごとくに叫んだ。一徹な老人の心には、忠直卿の不当な仕打ちに対する怒りが、炎の如く燃えた。

が、忠直卿は、老人の怒りを少しも介意せず、「えい!」と袴を捕えた手を振り放しながら、つっと奥へ去ってしまった。

老人は、幼年時代から手塩にかけて守り育てた主君から、理不尽な辱しめを受け、老の目に涙を流しながら、口惜しがった。彼は、故中納言秀康卿が、ありし世の寛仁大度な行跡を思い起しながら、永らえて恥を得た身を悔いた。