Japanische Klassiker mit Furigana
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おもいでのき
思い出の記
小泉 節子
Lesen Sie 思い出の記 (おもいでのき) von 小泉 節子 (こいずみせつこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 30.841 Zeichen · 62 Bildschirme
この人は評判の偏人でございましたが、腕は大層確かであったそうです。学問のない、欲のない、いつも貧乏をしていながら、物を頼まれても二年も三年もかかっても、こしらえてくれない老人でございました。ヘルンは面白いと云うので、大きい酒樽を三度まで進物に致しました。それから宅に呼びまして御馳走をしたり、自分でその汚い家を訪ねて話など致しました。彫刻を頼んで、そんなに要らないと云うのを沢山にやりました。しかし、宅にございますあの天智天皇の置物は、荒川の作にしては出来のよい方ではないが、ヘルンの申しましたこの『貧しい天才』を尊敬して買ったのでございます。
ある夏、二人で呉服屋へ二三反の浴衣を買いに行きました。番頭が色々ならべて見せます。それが大層気に入りまして、あれを買いましょうこれも買いましょうと云って、引寄せるのです。そんなに沢山要りませんと申しましても『しかし、あなた、ただ一円五十銭あるいは二円です。色々の浴衣あなた着て下され。ただ見るさえもよきです』と云って、とうとう三十反ばかり買って、店の小僧を驚かした事もあります。気に入るとこんな風ですから、随分変でございました。