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Japanische Klassiker mit Furigana

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おんがくどけい

性に眼覚める頃

室生 犀星

Lesen Sie 性に眼覚める頃 (おんがくどけい) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.495 Zeichen · 22 Bildschirme

Aozora Bunko

「お母さん。お母さん。」

と呼ぶのが、妙に重いような響をもって二階へきこえてくるのである。私はそのたびごとに、自分でも胸が痛むような気がして、二階から降りてゆくのであった。

「どうしたの。寂しいのかね。一人だから……」

そういうと、女の子はれいのまじまじした目で永い間私の顔を見つめていたが、

「お母さんは?……」

と低い声でたずねた。

「いつものお薬を取りに行ったんですよ。もう直ぐかえってきますからね。」

というと、頭の毛をうるさそうに握って手でたくしあげると、

「あたしお薬なんか既ういらないの。そう言って頂戴。」と、きっぱり言った。

「だって薬を服まないと、よくなりませんよ。」

「だっていくら服んだって同じことですもの。」

蒼白い顔をそっと少女らしく頬笑ませて、もう自分でも回復らないことを感じているらしかった。私は黙って室を出た。間もなくお母さんが帰ってきた。

医者はもう幾日も保たないと言ってしまってから或る日の女の子は、母親に、

「あたしね。もうすぐいけなくなるんですから。」

そう言って小さい鏡台を指さした。そこには女の子の用いるいろいろな白粉や刷毛の類が曳出しにしまわれてあった。