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Japanische Klassiker mit Furigana

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おんがくどけい

性に眼覚める頃

室生 犀星

Lesen Sie 性に眼覚める頃 (おんがくどけい) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.495 Zeichen · 22 Bildschirme

Aozora Bunko

母親は、その指さきと鏡台とを見つめていたが、女の子が何を言っているのか分らなかった。

「鏡台が見たいの。」というと、女の子は、

「いいえ。」と頭をふった。

「では、どうしたらいいのかね。」というと、

「あたし……あの……」と言って恥かしそうに顔をあかめた。そのとき母親ははじめて女の子が化粧したいと言いよどんでいるのが解ったのであった。

母親は、それを感じると同時に、女の子が死ぬとき綺麗にお化粧をしてやるものであることを知っていたのである。

母親は、間もなく女の子に、あたためたおしろいを形ばかりに塗ってやっていた。蒼白い顔は、すこしばかりの水気によってやや湿うたが、その皮膚はもう冷たくなっていたのである。

小さい病人は、形ばかりの化粧がすむと、少女らしく満足げに、美しいものが美しいものを保護するために、こうした最後の化粧に微笑んでみせた。

小さい病人は、また突然にこう言って母親を悲しがらせた。

「お母さん、きょうは幾日?」

そう言っただけで、母親はハッキリと娘の顔になにものかの冷たい影が這いかけたのを知った。

医者が来た。すると女の子は、じっと医者の顔を見つめていたが、突然に微笑をうかべた。